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世界で最も革新的なビジネスイベントを誘致し、クリエイティブ・MICE産業の起爆剤に ― 『C2 Melbourne』

2018-05-10

Founding Story

CommerceとCreativeをテーマに掲げた『C2』は、シルク・ド・ソレイユ創業者が設立に関わったとされ、従来のような堅苦しさが一切ない異色のカンファレンスだ。最もイノベーティブなビジネスイベントとも呼び声高い。2017年、モントリオールから誘致する形でメルボルンで、『C2 Melbourne』が開始した。

Fact

経営者参加率33%

6,500人の参加者のうち33%を経営者が占める(2017年のモントリオールでの実績)。この高いシェアには、『C2』が個人で参加してインスピレーションを得るだけの場ではなく、チームで参加して知的な刺激をビジネス開発に活かしたり、クライアントを連れて参加しブレイクスルーを共に考えたりといった、グループ仕様のプログラムが豊富に用意されている点が大いに影響している。

流通金額は1億6,500万ドル

彼らが参加者にとってアンケートによれば、カンファレンス閉会後6ヶ月間、『C2』で形成されたネットワークに紐づく取引の価値を評価すると1億6,500万ドル(2016年のモントリオールでの実績)だという。意思決定者の参加率が高いことで、“ただ参加して終わり”ではなく、次の仕事につながるイベントの可能性が感じられる。

Strategy

デジタルやフィジカルを駆使した多数の仕掛け

世界から集めたビジネスエグゼクティブとクリエイター、起業家たちが互いにインスパイアし合えるよう、デジタル・フィジカルの両レイヤーで非定型に仕掛けているのが特長のC2。従来のカンファレンスと一線を画すため、例えば、専用アプリで参加者をマッチングする機能を設けたり、シルク・ド・ソレイユ仕込みの宙吊りのトークショーを展開したり、はたまた人工雨を降らせた屋内空間を用意し、参加者たちに傘を差させて歩かせたりと、趣向を凝らしている。アイデアを生み出すためには、非日常性と親密な空間作りが欠かせないとの考えだ。

Courtesy of C2

Photo: Courtesy of C2

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C2のアジア太平洋地域拠点を開設予定

州政府は、C2の拠点をメルボルンに設ければ、2020年までに100人の雇用創出が期待できると見通し、2018年春に5,500万ドルの投資を決定した。その投資には、C2による雇用のみならず、外国企業の投資や雇用および地元企業の事業拡大への影響も、効果として見込んでいる。また、年1回のイベントではなく、“常設展”を都市に構えることで、『C2』の持つイノベーティブなイメージを分かりやすくアピールし、FinTechやHealthTechなど新産業が芽吹くメルボルンの進歩を内外から刺激する狙いもある。

C2メルボルンの会場は、直結するホテルを新設

C2メルボルンの会場になっているメルボルンコンベンション&エキシビジョンセンター(MCEC)は、2億豪ドルの拡張工事を進めており、最先端の駐車場や展示ホールと共に、4つ星ホテル・ノボテルを会場より直結させる形で新設させる予定だ。MICE市場開拓に積極的なメルボルンは、C2のようなソフト、MCECのようなハードの両面を活用している。

area vision MEMO

ビジネスに役立つ情報や洞察がスマホで得られる今、イベントに求められるものはセレンディピティをデザインすることだろう。『C2』は、ショービジネスで鍛えた聴衆を虜にするプレゼンテーション技術を、クリエイティビティを求めるビジネスの現場に援用し、セレンディピティを偶発させている。海を越えてその都市に出向くきっかけを、新感覚のイベント形式でつくっているのだ。

注目したいのは、メルボルンが、誘致・拠点開設・会場増設等の打ち手を繰り広げ、『C2』を都市にインストールしようと試みている点だ。『SXSW』や『アルスエレクトロニカ』のようにゼロからイベントブランドを築き上げる選択を取らなかったが、ただイベントを誘致するだけでは都市に根付かないことを理解しての発想だろう。