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『Melbourne Food & Wine Festival』 ― 「食の都=メルボルン」の国際的な評判形成ならびにワインの輸出力強化に貢献

2018-05-09

Founding Story

メルボルンおよびヴィクトリア州の豊かな食資源の生産を促し、若い才能を発掘・発信するために、1993年、非営利団体が開始。毎年、ヴィクトリア州のワイン醸造者がブドウの収穫と醸造をおこなう3月に開催され、ワイナリーツアーや料理教室、野外ランチイベントなどで、認知度を高めてきた。

Fact

17日間で30万人

毎年、メルボルンの初秋にあたる3月に開催され、25周年を迎えた2016年度は約30万人を集客した。

大小250のフードイベント

世界的なスターシェフや有名レストランのオーナー、ワインメーカー、ソムリエなどが登場する多彩なプログラムが開催。もちろん、市内のみならず、ヴィクトリア州全域でイベントは多数開催され、地元の人やコアなファンが食とワインを堪能する小旅行を楽しめる。

Strategy

フェラン・アドリア等の著名シェフによる特別料理提供

「noma」のレネ・レゼピ(René Redzepi)、「エル・ブリ」のフェラン・アドリア(Ferran Adria)といった、現代の食シーンを牽引するスターシェフを招き、メルボルンの地元のシェフと、メルボルンの食材を使ったメニューを提供。また、食べるだけでなく、スターシェフから学び、作る機会もあり、5つ星の高級ホテルチェーン「ランガム・メルボルン」で、世界トップクラスのシェフを迎えた、少人数限定の料理教室も開催される。

街のあらゆる場を、食のシーンに

約500mの世界最長テーブルにおよそ1,600名の参加者が着席しランチを楽しむ壮大なイベント「World’s Longest Lunch」に代表されるように、レストランはもちろんのこと、パブリックスペースや路地裏のカフェ、ルーフトップ、美術館やトラムといったあらゆるところが、年に一度の食とワインのフェスティバルの舞台となる。それにより、借り物になりがちなスターシェフの招聘を、その話題性をうまく活かしてローカル志向と融合させ、地元シェフが世界の食通にプレゼンテーションする機会としている。

Courtesy of Melbourne Food & Wine Festival

Photo: Courtesy of Melbourne Food & Wine Festival

Related Trend

「世界のベストレストラン50」の2017年に誘致

ミシュランに迫る勢いで食シーンを牽引する「世界のベストレストラン50」。開催14年目の2016年、初めて英国を離れてニューヨークで開催されたが、翌2017年はメルボルンでの開催となった。メルボルン=食の都としてのブランドイメージをより一層高めた。

GDP比率20%を、食・ワインが占める

観光省等の発表によると、ヴィクトリア州の食糧およびワイン産業は、年間300億豪ドルを超え、州のGDPの約20%を占めるまでに達している。

中国への輸出が急拡大

2015年の貿易協定で関税が下がったことや中国のワイン市場の拡大といった背景を受け、中国へのワイン輸出が1.5倍に(2017年実績に)。中国へのワイン輸入(金額ベース)は2016年、フランスに次いで2位となり、オーストラリアはイタリア、チリ、スペインよりもシェアを伸ばしている。

area vision MEMO

現在、中国や日本、インド等ワインで知られていない地域でも、ワインづくりは盛んだ。その競争下では、1つの商品、1つのワイナリーの魅力を個別に紹介しても到底差別化できないと考えるのは賢明だろう。

『Melbourne Food & Wine Festival』は、ワイナリーやシェフ、地元民、観光客が入り混じる「イベント」というパッケージにすることで、エリア全体を丸ごとブランディングしている。それによって、メルボルンおよびヴィクトリア州はフランス等の強力なプレイヤーとは差別化したイメージを築きつつある。
とりわけ、期間を17日間と長めにとり、州全域のワイナリーへと誘うことで、ただの週末イベントではなく、旅行体験を提供している点に注目したい。旅行は誰もが関心のあるもの。旅行という文脈を有することで、普段メルボルンのフード・ワインの各ブランドに着目してない専門家をも取り込み、関係人口の拡大を可能にしている。